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進化系和洋折衷カクテルを繰り出す 鈴木 敦のオールドファッションド

記事掲載元:BAR TIMES(https://www.bar-times.com/contents/82987/)
オールドファッションド ウィーク記念企画

 


カクテルファンから高い支持を受けるオールドファッションドは、バーテンダーの感性を反映できるクリエイティブなカクテルとして世界でも大人気。2015年にパリで始まったオールドファッションド ウィークは、今や世界的イベントにもなっているほどです。そのオールドファッションドのベースとして、世界中の多くのバーテンダーがチョイスするのが、ウッドフォードリザーブ。今回は、海外で豊富なバーテンディング経験を持ち、独創的なカクテルを生み出すTHE BELLWOODの鈴木 敦 氏に、ウッドフォードリザーブでつくるオールドファッションドを披露いただきました。(撮影場所/THE BELLWOOD)

奥渋谷に誕生した「大正モダンなカフェー」

奥渋谷、通称“奥渋”で親しまれる宇田川町に、2020年6月「THE BELLWOOD」がオープン。100年前の東京で流行した「大正モダンなカフェー(特殊喫茶)」がコンセプトで、バックバーやスツール、照明など、インテリアの一つひとつが雰囲気たっぷり。カウンターに立つ鈴木氏は、この店で提供するカクテルについてこう語ります。「カクテル文化は元々西洋から入ってきたもの。当時は和洋折衷の形で、日本人のバーテンダーが日本のゲストにカクテルを振る舞っていました。ここでは現代の解釈でつくった和洋折衷のカクテルを楽しんでもらいたいんです」。和洋折衷のオールドファッションドとはどのようなものか、期待が高まります。

THE BELLWOOD

鈴木 敦 氏が創造するオリジナル オールドファッションド

地元のよもぎを合わせた和のオールドファッションド

和菓子と駄菓子を融合させたオールドファッションドで、この店をオープンする時に考えました。名前は『奥渋ファッションド』。僕の生まれ育ちは東京・葛飾区の柴又で、草団子をはじめ和菓子がとても有名な町なんです。だから、自分の育った町の名物を使い、よもぎときな粉をウッドフォードリザーブにインフューズしてみました。ちなみに、よもぎは葛飾産のものを使っています。葛飾愛が強すぎますよね(笑)。そしてもうひとつ、『奥渋ファッションド』に欠かせない要素が麩菓子です。子供の頃は駄菓子屋さんがたくさんあって、僕もよく食べていましたから。

素材によって変化するウッドフォードの懐の深さ

オールドファッションドは、苦味と甘味も楽しむカクテルなので、『奥渋ファッションド』ではよもぎが苦味のパートを担っています。意外なことに、よもぎとウッドフォードリザーブって相性がいいんですよ。ウッドフォードリザーブは、ボディがしっかりしているのに口当たりがまろやかで個人的にも好きなウイスキーなんです。舌がしびれるような荒々しさもないし、蜂蜜を思わせる甘い香りや、リンゴなどのフレッシュなフルーツの香りもします。ウッドフォードリザーブだけでも十分完成されているのに、カクテルベースとして合わせる素材の存在感をちゃんと出してくれるんです。いい意味でウッドフォードリザーブが変化してくれるというか。だから、和の素材であるよもぎの個性もしっかり表してくれるんです。

よもぎときな粉をインフューズした『奥渋ファッションド』。グラスに添えられているのは麩菓子。よもぎのビター感と麩菓子の黒糖がよく合うという。

オールドファッションドはひとつの旅のようなもの

角砂糖を溶かして甘さを調節するのがオールドファッションドの特徴のひとつですが、『奥渋ファッションド』は麩菓子で甘さを調節します。この麩菓子の黒糖感がすごく合うんですよ。ひと口飲んで、ひと口齧る。口の中でよもぎの苦味と麩菓子の甘味が合わさって、まさに和菓子と駄菓子が融合を実感できます。
オールドファッションドは、飲み手側にもそれぞれのスタイルがあると思うんです。ゆっくり氷を溶かして、飲みはじめから飲み終わりまで味わいの変化を楽しむ。一杯のカクテルで移り変わりを楽しめることから、”オールドファッションドは、ひとつの旅のようなもの“と表現した外国の方がいました。すごくロマンチックなことを言うなぁって(笑)。やはり人それぞれにこだわりとか、思い入れがあるんですよね。そういう特別な魅力みたいなものがオールドファッションドにはきっとあるんだと思います。

生まれ育った葛飾・柴又で親しまれる和菓子の要素を取り入れたアメリカ生まれのオールドファッションド。和菓子と駄菓子、柴又とアメリカが融合したカクテル。「葛飾愛が強いんですよね(笑)」と鈴木氏。


鈴木 敦 氏が提案する自宅で楽しむオールドファッションド

ビールとウイスキーを合わせたブリティッシュな一杯

オールドファッションドのビターズ代わりに、“濃縮ビール”というものをつくってみました。何かと言うと、ビールを完全に凍らせた後、逆さまにして常温放置するとだんだん解凍されて濃度の高い液体がポタポタと落ちてきますよね。これが濃縮ビールです。僕は昔、サッカーをやっていて、夏になるとスポーツドリンクを冷凍庫でキンキンに冷やして練習や試合に持って行っていました。少し溶けた時に飲む最初のひと口ってすごく濃いんですよ(笑)。それと同じで、麦芽の香りとホップの苦味がすごく感じられて、ビターズの代わりに十分使えます。自宅用になかなかビターズって買わないでしょ。僕はこれまで自分が見聞きした感じた海外での経験から、このカクテルに『ブリティッシュ ファッションド』と名前をつけました。

24歳でアメリカに行った時、バーでオールドファッションドを頻繁に耳にしました。驚いたのが、僕が知っていた日本のオールドファッションドと全然違ったんですよ。クラッシュアイスじゃないし、スライスした柑橘類も入っていない。帰国後、今度はイギリスへ渡ったんですが、イギリスでは何世紀もの間、パブカルチャーが根付いていて、昼間からビールやウイスキーを飲んでいる人たちを普通に見かけるんですよ。日本ではなかなかない光景ですけどね。そんなアメリカ生まれのクラシックカクテルを僕の感じたブリティッシュ風に作ってみようと考えて濃縮ビールとウッドフォードリザーブを合わせ、このカクテルを『ブリティッシュ ファッションド』としました。
簡単に自宅でつくれますし、今までに味わったことのないオールドファッションドが楽しめますよ。

ビールを凍らせてつくる濃縮ビール。この日、鈴木氏が用意したのはIPA。苦味が強く、ホップ感をよりいっそう感じられるビールだ。破裂しないよう別の容器に移し替えて冷凍庫へ。
濃縮ビールをウッドフォードリザーブを合わせた『ブリティッシュ ファッションド』。麦とホップ感が口に広がる今までにないオールドファッションドだ。濃縮ビールの量を調整することで、苦味を抑えたり、より苦味を楽しむことができるのも魅力。

プロフィール
鈴木 敦(すずき あつし)
高校卒業後、都内バーでの下積みを経て、24歳で単身NYへ。名店「Angel’s Share」にてバーテンダーとして勤めたのち、さらなる海外経験を求めロンドンへ渡りバーテンディングを学ぶ。その後カナダに拠点を移し、2013年にはトロントで開催されたコンペで優勝。翌年帰国し、現在パートナーでもある後閑信吾から上海「Speak Low」でのヘッドバーテンダーのオファーを受け中国へ。その後、2017年「Sober Company」が上海にオープン。同年中国代表としてウイスキーの世界大会に出場し、優勝。中国代表が初めてカクテルの世界大会で優勝を飾ることとなった。DRiNK MAGAZINE BAR AWARDS 2017にてBARTENDER OF THE YEARを日本人として初めて受賞。SG Groupグループマネージャーとして上記2店舗と「The SG Club」を含めた3店舗の責任者を務める。2018年、自身の会社Bellwood Experiment Inc.を設立。

[レシピ]
・ウッドフォードリザーブ 45ml
(きな粉とよもぎをインフューズしたもの)
・アンゴスチュラビターズ 1dash
・和三盆シロップ 1tsp
・オレンジピール
・麩菓子

[つくり方]
グラスにアンゴスチュラビターズと和三盆シロップを加え、ウッドフォードリザーブを注いで混ぜる。氷を入れてステアし、オレンジピールで香りづけ。最後に麩菓子を添える。


『ブリティッシュ ファッションド』のメイキング動画をご覧いただけます。

[レシピ]
・ウッドフォードリザーブ 45ml
・黒糖シロップ 2tsp(黒糖2:水1)
・濃縮ビール 5ml
・グレープフルーツピール

[つくり方]
グラスに黒糖シロップと濃縮ビール、ウッドフォードリザーブを注いで混ぜる。氷を入れてステアし、グレープフルーツピールで香りづけをする。


記事掲載元:BAR TIMES(https://www.bar-times.com/contents/82987/)

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