このコラムでは、バランタイン7年の発売にあたり、バランタイン社の190年の歴史に触れながら、7年というボトルの楽しみ方を紹介します。
バランタインにとって7年という年数表記には特別な意味があります。
また、バランタインのボトルデザインには、バランタイン社が築いてきた伝統や思想がデザインとして落とし込まれています。
ぜひバランタインの歴史と伝統に想いを馳せながら、新ボトルであるバランタイン7年を余すところなく楽しみましょう。
これぞ”王室御用達ウイスキー”、バランタイン190年の歴史
スコットランドで作られるスコッチウイスキー。
マッカランやグレンフィディックといったシングルモルトウイスキーから、ティーチャーズなどのブレンデッドウイスキーに至るまで、数々の有名ウイスキーがスコットランド国内で生産されています。
そんなウイスキーの一大生産国スコットランドにおいて、名だたる有名ウイスキー銘柄を差し置いて”王室御用達”の称号を得たウイスキーが存在します。
それが今回紹介するバランタインです。
1827年創業バランタインは、スコッチウイスキーの伝統そのもの
バランタインの始まりはおよそ190年前の1827年。
創業者であるジョージ・バランタインがスコットランドのエディンバラで小さな食料品店を開いたのがきっかけでした。
職人気質のジョージ・バランタインは、当時まだ確立されていなかったブレンド技術の開発に打ち込みます。
ブレンド技術の修練と並行して、ワインの供給不足によるウイスキー需要増大などの幸運にも恵まれながら、順調に事業を拡大していきました。
それ以来、サービスと品質の良さでバランタインの商売は繁盛し、現代に至るまで多くの顧客から支持を得ています。
ヴィクトリア女王から授けられた“王室御用達”の称号
バランタイン社にとって飛躍の年となるのが1895年です。
この年、父親であり創業者のジョージ・バランタインから事業を引き継いだ息子ジョージ2世は、グラスゴーにおいてウイスキーの卸売りをしながらブレンド技術を磨いていました。
そのジョージ2世のもとを訪れたのは、なんと当時のイギリス第六代ヴィクトリア女王。
ヴィクトリア女王は、バランタイン社の高いブレンド技術を認め、“王室御用達”の称号を授与しました。
この出来事により、バランタイン社の世界展開が飛躍的に加速しました。
7年という数字に込められた意味
今回新たに発売されたバランタイン7年は、その名の通り7年以上の熟成期間を経た原酒のみを使用したボトルです。
7年という数字が持つ意味
実は、バランタイン社にとってこの7年という数字は特別な意味を持っています。
今からおよそ150年前の1872年、バランタインの創業者であり初代マスターブレンダーを務めたジョージ・バランタインは、自社ウイスキーに初めて熟成年数を表記しました。
当時はまだ熟成年数を表記するという慣習がなかったため、実に挑戦的な取り組みとして受け取られました。
その際にジョージ・バランタインが記した熟成年数こそが7年だったのです。
今回の発売に至るまで、12年、17年、21年というバランタインの現在の通常ラインナップには、7年熟成のボトルが長らく含まれていませんでした。
長熟ウイスキーを好む現代の消費傾向を鑑みれば、7年という熟成年数はかなり若い印象を受ける方も多いでしょう。
そのような印象と同時に、ウイスキーファンであれば、必ずしも「長熟=美味しい」や「長熟=質が高い」とは言えないということもご存知だと思います。
とはいえ、そうは分かっていながらも、ついつい長熟ウイスキーに対する憧れを抱いてしまう、そのような気持ちも、僕自身いちウイスキーファンとして痛いほど分かります。
7年を表記するという挑戦
このような長熟ウイスキー優位な消費傾向がある中、あえて比較的若い7年という熟成期間を表記することは、ある意味で挑戦です。そしてそこには、バランタイン社の伝統に対するプライドを感じずにはいれません。
熟成期間を表記するというジョージ・バランタインの挑戦の意志を受け継ぎ、150年の時を経た今、バランタイン社は再びバランタイン7年という思いのこもったボトルを引っ提げて、私たちウイスキーファンに挑戦しようとしているのではないでしょうか。
バランタインのボトルデザインを紐解く!
いざ試飲、と意気込む前に、一息おいてボトルデザインに注目してみましょう。
意外とボトルデザインやラベルデザインをじっくり見る機会は少ないのではないでしょうか?
ウイスキーボトルを目の前にすると、どうしても香りや味が気になってしまうものです。
ですが、ボトルやラベルにはそれぞれの銘柄の歴史が刻まれています。
ならばそれを含めてじっくりと、それぞれの銘柄が持つ奥深さを楽しみたいものです。
ウイスキーの楽しさは香りや味にとどまりません。いわば「歴史を飲む」こともその醍醐味の一つです。
バランタイン特有のV字ラベルに隠された秘密とは?
バランタインには大別して2種類のボトルがあります。
ひとつは、ファネストや12年、そして今回紹介している7年に採用されている、角ばった形状のボトル。
もうひとつは、17年や21年などに採用されている円柱状のボトルです。
前者の角ばった形状のボトルには、特徴的なV字型をしたラベルが貼付されています。
このラベルの形状にも、ちゃんとバランタインの歴史に基づいた意味が込められているのです。
このV字型ラベル、見覚えのある方も多いかと思います。
このラベルには名前がついており「シェブロンシェイプラベル」といいます。
シェブロンシェイプとは、紋章学における中世の盾のデザインを指します。
これは紋章学上、高貴なデザインとされており、そこには「保護」や「信頼できる働きを成した建築家」といった意味が込められています。
冒頭で述べた通り、バランタインは王室御用達の称号を得た銘柄です。
それはすなわち国からの保護、あるいは信頼を意味し、それらに対するバランタイン社の誇りがラベルデザインへと反映されているのです。
ブラック&ゴールドで統一された高級感漂う7年ボトル
ボトル全体に目を向けてみましょう。
全体がブラックとゴールドで統一されていることがわかります。
ここまで徹底的に色を統一したボトルは珍しいです。
実物を見ると、そのミニマルなデザインがより感じられると思います。
ブラックとゴールドという配色から高級感を感じますが、それ以上にラベルデザインも相まってモダンな印象を受けました。
オールドボトルを楽しむファンにとって、ボトルにプリントされた紋章の色は、そのボトルが発売された時期を見分ける手がかりでもあります。
そのため、その紋章がゴールド一色になっているというのは、一つの驚きポイントでもあるのです。
せっかく紋章の話が出たので、もう少しバランタインの紋章について紹介します。
分かりやすいように、カラーで印刷されたファイネストの紋章を例にします。
この紋章のプリント中央をよくよく見ると、そこにはウイスキーづくりにとって欠かせない四つの要素がイラストとして描かれていることに気がつきます。
まず左上の青い部分には、ウイスキー作りの原料となる大麦が描かれています。
その右隣には何やら斜めの線が。これは川、すなわちウイスキー作りに必要な水を表しています。
良質なウイスキーを作る上で、ウイスキー作りに適した水質の水源が不可欠です。
ちなみにスコットランド内のウイスキー生産地域として有名なスペイサイドは、スペイ川の河畔という意味です。
スペイ川の水質がウイスキー作りに適しているため、ここに蒸溜所が密集しているのです。
話を川から紋章に戻します。
中央左側には蒸溜機、いわゆるポットスチルと呼ばれるものが描かれています。
ウイスキー作りにおいては、ポットスチルの形状やその材質によって出来上がるウイスキーの風味が左右される非常に重要な要素です。
そして最後に、右下のに描かれた熟成樽。
これはもはや説明不要かと思いますが、ウイスキーに独特の風味を与え、黄金色に染めるのが樽熟成の過程です。
実は、この樽熟成のメカニズムは現代の科学技術を持ってしても完全に解明できていないのです。
いわばブラックボックスともいえる樽の中で、私たちが飲んでいるウイスキーが生まれています。
次は実際に飲んでみる!12年やファイネストとの飲み比べも!
今回のコラムでは、バランタインの歴史から始まり、ボトルやラベルのデザインに至るまで、個人的なツボも交えながら紹介してきました。
次のコラムでは、実際にバランタイン7年を開封試飲します。
また、ファイネストや12年との飲み比べもしながら、7年の魅力を深掘りしていきます。
ここまで読んでくださった方、ぜひその勢いで次のコラムも読んでいただけると嬉しいです。
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